ー今回の新型コロナウイルスでクリニックとして取り組みは随分変わったのでしょうか?
「がらっと180度変わったかといえば、決してそういうわけではありません。当クリニックに限ったことではありませんが、以前から歯科医院では『スタンダードプリコーション』という概念が定着していたことが大きいのだと思います」
ー『スタンダードプリコーション』とは?
「『スタンダードプリコーション』とは、すべての患者さんが何らかの感染症を持っているという前提で進める感染予防策の概念です。例えば、HIVウイルスに感染している人がいたとしましょう。そのすべての方が『私はキャリアです』と言ってくださるとは限りませんよね。もちろん、言いにくい環境を作っている私たちの側にも責任があるわけですけども、それを前提として、考え得る予防策をすべての方に施行していくのです。仮に何か起こった時、お互いに『ごめんなさい』で済む話ではないですからね」
「口腔外バキュームの使用はその1つでしょう。歯を削ると、周囲に歯の削りかすや唾液が飛散することになります。それを吸い込んでくれるのが口腔外バキュームで、エアロゾル対策として必須のものと言えるでしょう。当然のことながら、お口に入れるもので滅菌可能なものはすべて滅菌し、そうでないものはディスポーザブルしていくことになります。滅菌の工程は瞬時に終わるものではありませんから、タービン等の器具がある程度の本数が必要になります」
ー『北山田グリーンデンタルクリニック』の滅菌について教えてください。
「感染という意味で1番問題になるのが血中や唾液に含まれるタンパク質です。そのタンパク質を不活性化、つまり除去することができれば感染は防げるということになります」
「滅菌にもレベルがあります。従来の滅菌器(オートクレープ)では、一部の器具のそのまた一部分については、滅菌しきれないところがありました。当クリニックで導入しているヨーロッパ基準のクラスB滅菌器では、チャンバー内で真空と蒸気の注入を交互に繰り返して歯を削るタービンやハンドピース内部の中腔パイプ内の残留空気を抜き、蒸気を細部にまで行きわたらせることで滅菌処理を行っています。また従来の機器では取りきれなかった一部のタンパク質もクラスBは取り除くことを可能にしています」
ヨーロッパ規格EN13060ではB、S、Nという3種類の滅菌サイクルのクラスがあります。その中で唯一クラスBサイクルだけが全ての形状の被滅菌物(固形、中空物、多孔体、一重包装、二重包装)を滅菌できるとされています。
「クラスBの滅菌器を導入している医院は増えてきているとはいえ、全体では10%程度。旧来の滅菌器を使ってるから感染してしまうというわけではありませんが、そのリスクを最小限にするために出来ることをおこなっています」