北山 隆 院長（ペインクリニック北山医院)のインタビュー

この道に入るきっかけと、これまでの経緯についてお聞かせください。

出身地の岡山で、祖父の代から医者をしていましたので、自分もその道を歩むのは自然のなりゆきでした。父は外科医で、祖父は内科医で岡山大学の教授をしていました。そのため国の命令で、広島に原爆が投下された翌日に医療班の班長として現地に入り、二次被爆しました。結局、白血病で比較的若くして亡くなったんですけどね。だから祖父の記憶はあまりありません。 僕は父親の姿を見ていて、自分も進むなら外科だなと。内科医向きではないと思っていましたし……。外科もいろいろあるので、大学を卒業時にどこに入局するのか決めかねていたんですが、外科系に進むなら麻酔をやっておいて損はないだろうというのでそちらにしました。それが、麻酔の仕事がおもしろくて、以来、麻酔科医一筋です。内科が何年、何カ月というように長期に経過を診ていくのに対して、外科はもっとサイクルが短いですよね。麻酔科はより短くて、極端な話、それこそ分単位、秒単位で患者さんの状態を把握していかなければならない。そういうところが非常におもしろくて、やりがいを感じたところですね。医局勤務を経て、出身の聖マリアンナ医科大学にも近いという理由でこの地に開業しました。実は、ここと並行して「聖マリ」でもペインクリニックを中心に非常勤医を務めているんですよ。

『ペインクリニック北山医院』の特徴と治療方針をお聞かせください。

ペインクリニックということでお話ししたいと思いますが、これは麻酔科の中の特殊な分野でして、様々な痛みや、しびれとか神経のマヒとかに対して、神経ブロック（注射）を中心に、薬物療法や理学療法も含めてトータルに診て、痛みを緩和させるというものです。痛みをマヒさせるのではなくて、その逆です。交感神経、自律神経に局所麻酔薬を作用させて、痛みを和らげたり血流を改善させたりといったものですね。僕のクリニックの患者さんは高齢の方が多く、肩や腰、首の痛みといったもののほかに、頭痛、顔面神経マヒ、突発性難聴、帯状疱疹など本当にいろいろです。いきなりここに来られるのではなく、整形外科や耳鼻科などからの紹介でおみえになる方が多いですね。

診療の際に注意されているのはどんなことですか？

一番重要なのは年齢や体力に応じた治療を選択するということですね。患者さんの生活習慣を把握して、それを考慮しながら、合併症のないように気を遣うことも大事です。特に最近は、いろんな種類のお薬を服用してらっしゃる方が多いので注意が必要です。脳梗塞や心筋梗塞をやられた方は、また血栓ができないよう、血が止まりにくくなる薬を服用されていることがよくあります。そういう場合、安易に注射したら大変なことになる恐れがありますからね。

今後、取り組んでいきたいことはなんでしょうか？

僕自身は今まで通り地道にやっていけばいいと思っていますが、もっともっとペインクリニックをやる先生が増えてほしいですね。大学病院や大きな総合病院では麻酔科医が不足しているんで、手術室のいわゆる麻酔業務でみなさん手一杯で、ペインクリニックのトレーニングがしたくてもできないという先生がたくさんいらっしゃるんですね。そういう人のために、後進の指導と言うとおこがましいのですが、母校の聖マリアンナにもまだ（非常勤医として）籍はありますし、若い先生たちと一緒になってペインクリニックをやっていきたいですね。
僕は「聖マリ」の医局時代に頼み込んで、昭和大学へ一年間、ペインクリニック専従で行かせてもらったことがあるんです。手術業務をしないで集中したかったからです。そこのペインクリニックは患者さんが一日１００人くらいと、日本でもトップクラスの症例数と技術力でしたから非常に勉強になりました。そういう経験を生かして、及ばずながらですが、私なりに力を尽くしたいですね。

最後に地域の皆様にメッセージをお願いします。

痛みは我慢しないで、今、診てもらっている先生に言うべきです。痛みを思い切り訴えることで、「それなら、こういうクリニックもありますよ」とほかの医院から紹介されて、ここに限らず、ペインクリニックを知ってもらうきっかけにしてもらえたらいいですね。痛みを我慢するのは美徳ではない。不必要な痛みは早く取り除いたほうがいいです。でも、必要な痛みもありますからね。痛みをもって体が警告して病気がわかるというケースです。お腹が痛いから虫垂炎がわかったというようなことですね。ですから、痛みを感じたら我慢しないで、まず近くの医院で診てもらってください。
このクリニックを開業して今年２０年目に入ります。開業当時に、ご高齢だなあと思って診ていた患者さんと近い年になって、僕自身がそういう方々の痛みを実感できるようになりました。そんなところも生かしながら、地道に、誠実にやっていきたいと思っています。

※上記記事は2014.8に取材したものです。
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