川本 泰正 院長(医療法人社団 川本歯科クリニック)のインタビュー

医療法人社団 川本歯科クリニック 川本 泰正 院長

医療法人社団 川本歯科クリニック 川本 泰正 院長 YASUMASA KAWAMOTO

大学卒業後、補綴(ほてつ)を専門に研鑽を積む。勤務医として幅広い症例を経験し、「たまプラーザ駅」そばに開業。

歯科医を志したきっかけと開業までの経緯について教えてください。

父が歯医者でしたから、クリニックに行くとよくクレゾールの匂いがしました。小学生の頃は、その匂いが好きで歯科医になりたいと作文に書きましたが、思春期を過ぎますとモノの「かたち」に興味を抱くようになりました。モノにはそれぞれ固有のフォルムがあります。歯科医師の仕事は「壊れたものを美しく修復すること」だという認識が徐々に高まってきました。
実はその時期ファッションやデザインにも関心を持つようになり、趣味が高じて学生時代は洋服の販売でアルバイトしていました。新しいデザインにワクワクしましたが、「この仕事はあくまで趣味の範疇で」という割り切りがどこかであったのでしょうね。

こうしたフォルムへの関心から、「補綴(ほてつ)学」を専攻として選びました。これは、虫歯などで壊れた歯を被せ物や詰め物を装着して本来の形に戻す作業です。学部を卒業した後は補綴の医局で3年間修業し、その後は逗子のクリニックと内幸町のプレスセンタービルでそれぞれ3年ずつお世話になりました。

ご多忙な中、新しい治療法の勉強や情報収集はどのようにやっていらっしゃるのですか?

ハードレーザー(レーザー光を照射して患部の切開や殺菌を行う治療器具)を取り入れ、患者さんの苦痛を取り除く治療を心がけています。休診日以外は夜遅くまで診療に当たり忙しいのですが、治療技術の向上に役立つものはどんどん情報収集して取り入れています。たとえば、以前取り入れたデジタルパノラマエックス線システムは取り込んだデータを無線でiPadに飛ばすのですが、コンピューター上で3D測量したデータは歯の長さなどでほとんど誤差がありません。
しかし道具は便利な反面、頼り過ぎると歯科医師としての能力が鈍っていくようにも考えています。かつてわたしがお世話になった先輩たちは、自分たちの治療方法を見て覚えさせ、それぞれの意味について自身で多角的に考えるよう指導してきました。わたしたちはこれにならい、わからないときは試行錯誤しながら外堀を埋め、時間がかかっても地道に原因に迫るように診療してきました。治療技術が進歩してきますと、一方でデータとして確立されていない事象を自身で解明しようとせず「思考停止」に陥ってしまうのではないかという懸念があります。

ハードレーザー治療について詳しくお聞かせください。外科手術や殺菌に使っていらっしゃるようですが。

歯科用ハードレーザーは、歯や歯肉・歯茎、顎関節にレーザー光を照射し、患部の生体組織を活性化して治す器具です。この器具の難点は使い方を学ぶのに時間がかかることですが、いったん習得すると手放せなくなります。その理由は、患部の傷の治りが早く出血がほとんどないこと。また切除した後に痛みが残りにくいことです。こうした理由から治療計画も立てやすく、早期回復につなげることができます。また歯科用ハードレーザーは精密で汎用性が高く、出力と照射モードが様々に調整できることも大きな利点です。
治療法については、使用者同士で経験則で得た情報を収集し、勉強会を行っています。たとえば顎関節症に効く設定を突き止めた先生がいらして、その先生のおっしゃる通りに治療してみたところ、本当にあごの関節がスムースに開くようになったこともあります。

補綴がご専門とのことですが、詰め物・被せ物へのこだわりについて教えてください。

先ほどお話した通り若い頃から「モノづくり」への憧れが強かったため、友人にはファッション、建築関連の人が多く、わたしは自分の職業をこうした方たちと近いものと考えています。歯医者の仕事は口の中の機能を回復し美しく見せることだと思うからです。それぞれの患者さんに合わせて、口の中をコーディネートするのです。お金をかけなくても、矯正をしなくても、被せ物や詰め物の形又はフォルムをきちんと作れば、患者さんの口元を美しく仕上げることができます。モノが噛めるようにする、痛みをなくす…といった機能的なことは、できて当たり前です。これに加えて口元を清潔に美しく健康に見せ、患者さんの生活の質を考えられる歯科医として皆さんに貢献したいのです。
ですから、詰め物・被せ物にはとことんこだわります。歯科技工士さんには嫌われているかもしれません(笑)。詰め物・被せ物の要は、「色」「フォルム」「精度」です。最近はセラミックをコンピュータで削って作れるようになりましたが、実際に患者さんの口から型を取って作ったものと比べますと、どうしても誤差ができます。特にそれは、「精度」に顕著に表れます。ガタツキができるのです。

大人の矯正についてお聞かせください。

残念ながら多くの大人は、色々な処置を施した歯が多数混在しています。矯正をする場合、ブラケット(ワイヤーをかけたりする装置)をつけなくてはならないのですが、冠が被っていたりするとつけにくい場合が多々あります。その場合当院においては、一般的な治療をしているわれわれと矯正の先生が直接話をし、この場で最も適切な内容とタイミングで処置をすることができるメリットがあります。例えば大人の場合どうしても、歯を動かす限界な歯という場合があります。その場合にも矯正の先生と話をして治療を進めつつ、被せるものなどで多少歯の向きを変えたりすることで、最大限まで美的にすることが可能となります。こういった一般的な治療と矯正治療との連携は、矯正専門の歯科ではなかなか難しいと思われます。実際に患者さんの歯を見ながら矯正の先生とともに、その方にあった治療をコントロールできる、それが当院で行うとても大きなメリットとなります。
大人の方の矯正治療は、いままでたくさんの治療が施されていると、とても困難な治療となります。ですが最近は矯正を希望される方が多いので、当院のそういうメリットをいかした治療はとても有効だと思います。
また従来のワイヤーからあまり目立たないマウスピースの矯正も行っておりますので、ぜひお気軽にご相談ください。

診察で心がけていることと、地域のみなさまへのメッセージをお願いします。

座右の銘である「己の欲せざること、人にすることなかれ」の裏を返せば、自分が望む治療を患者さんに施すことになります。つまり、その人に合った一番よいものを長年の経験を踏まえて考え、最適なものを選ぶのが私の仕事です。
当院で詰め物に金属を使わないのもこうしたことからです。アレルギーを発症する患者さんが多いことと、笑ったときの口元を気にされる方が多いためです。実際金属の冠を詰めた方で意外とにデキモノができたケースがあり、冠を取り除いたら治りました。口の中の金属は知らないうちに身体に影響を与えています。ですので、詰め物は強度が耐えられる限り歯の色に近い材質を使います。

地域の皆さんには、「ざっくばらんに何でも話せる歯医者」として覚えていただけたら嬉しいですね。当院にいらっしゃる患者さんは、腹を割ってさまざまなご要望をおっしゃいます。一方歯科医師のわたしは、症状を治すために守っていただきたいことをストレートに申しあげます。つまり、1つの症状に対して向き合う姿勢は同列だという考え方をしています。一緒に頑張って治しましょう、ということです。悪い習慣はあらためていただきますが、わたし自身が食いしん坊ですから、好きなものは我慢させません(笑)。その代わりに口の中のケアを徹底していただくのです。

※上記記事は2015.6に取材したものです。
情報時間の経過による変化などがございます事をご了承ください。

医療法人社団 川本歯科クリニック 川本 泰正 院長

医療法人社団 川本歯科クリニック川本 泰正 院長 YASUMASA KAWAMOTO

医療法人社団 川本歯科クリニック 川本 泰正 院長 YASUMASA KAWAMOTO

  • 出身地: 東京都
  • 趣味・特技: スキー、テニス、ゴルフ
  • 好きな本・愛読書: 若い頃は岩波新書と格闘しました。
  • 好きな映画: 冒険もの。「インディー・ジョーンズ」シリーズ(1981年-、米パラマウント映画)など
  • 好きな音楽・アーティスト: サラ・ブライトマン
  • 好きな言葉・座右の銘: 己の欲せざること、人にすることなかれ
  • 好きな場所・観光地: 横浜

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